貸倒損失における「事業の遂行上生じた債権」の意義

――貸付けの事業性と本来の事業との関連性をめぐって

 所得税法上、貸倒損失の必要経費性を検討するに当たっては、当該債権が回収不能となったという事実のみならず、その債権がいかなる原因及び経緯によって発生したものであるかが重要となります。

 貸付金その他の金銭債権については、それが貸金業等の事業の遂行に伴って発生したものなのか、あるいは納税者の本来の事業に付随して発生したものなのかによって、貸倒損失としての必要経費性の判断枠組みが異なり得ます。

 この点、「事業の遂行上生じた債権」という要件は、当該債権の発生原因となった行為自体が独立の事業を構成することを要求するものなのでしょうか。それとも、本来の事業との間に合理的な関連性が認められ、その遂行上必要ないし相当な行為として行われたものであれば足りるのでしょうか。

 この問題は、貸付けを本業としない事業者が取引先に対して行った貸付けについて、当該貸付金の貸倒れを必要経費に算入することができるかという、実務上しばしば問題となる論点です。

 ご紹介する記事で私が取り上げた平成25年3月19日裁決は、ビニールハウスの販売・設置及びリースに関連する取引先への貸付け等について、その貸倒損失の必要経費性が争われた事例です。

 本裁決において注目されるのは、個人による複数回の貸付けを一括して評価するのではなく、その発生原因、契約関係、取引の実質及び本来の事業との関連性を踏まえ、個々の貸付について「事業の遂行上生じたもの」に該当するか否かを検討している点です。

 問題となるのは、当該貸付けが納税者の本来の事業活動といかなる関係に立ち、その事業の遂行上の行為として評価することができるかという点です。

 本来の事業に関連して行われた資金提供であるという事情が存在すれば、当然にその貸倒損失が必要経費となるわけではありません。事業上の取引先に対する便宜的・援助的な貸付けであるからといって、事業の遂行上生じた債権と判断されるわけではありません。

 「事業の遂行上生じた債権」であるかは、①債権の発生原因、②貸付けの目的、③本来の事業との具体的関連性、④取引条件及び契約関係、⑤当該行為が事業遂行上必要又は合理的なものであったか、といった事情を総合的に検討することが求められます。

 下記の記事では、上記裁決を素材として、「事業の遂行上生じた債権」の判断基準を検討するとともに、貸付けの事業性が問題となる場合と、本来の事業に付随する資金提供の必要経費性が問題となる場合との関係を整理しています。

 貸倒損失の認定は、単なる回収不能の事実認定にとどまらず、債権発生の基礎となった事業活動の内容をどのように法的・税務的に評価するかという問題でもあります。本裁決は、その判断枠組みを検討する上で、実務上参考になるものです。


本論点の詳細については、以下の掲載記事をご覧ください。

「貸倒損失~事業の遂行上生じた債権の認定(上)」旬刊速報税理第36巻第5号(2017年2月11日号)
「貸倒損失~事業の遂行上生じた債権の認定(下)」旬刊速報税理第36巻第6号(2017年2月21日号)

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